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味醂の仕込みに本格焼酎を使う理由

sai-jyoryu072 実は味醂の仕込みに使う焼酎を「本格焼酎」ではなく「醸造アルコール」を使っても、他の原料が「もち米」「米麹」だけならきれいな甘味があるおいしい味醂ができます。杉井酒造でもその規格で造っていた事があります。

 米から造った「本格焼酎」は味わいは淡白ですが醸造アルコールとは異なるコクがありこれが味醂の味わいにコク、複雑さ、深さを与えていると思います。醸造アルコールを使った場合との差は微妙ではありますが差があります。

 食品製造では近代的な技術を使って、本来とは異なる材料を使ってコストを下げながら、本物にかなり近い味わいを実現している例がけっこうあります。

 私が普段利用するビジネスホテルの朝食では本物のバターが出てくる事はまずありません。マーガリンかバターにかなり似せてありますが、少し風味が異なるものが出てくる事はほとんどです。

 他の業界の事なので正確な知識はありませんが、コーヒーに入れるクリームも牛乳からではなくトウモロコシの油成分などから作っているものが出てくる事があり、味が少し異なります。

 他にもトウモロコシ由来で、もち米と同じ種類のでんぷんを使った餅とか、本来とは異なる材料を使って、かなり本物に近い味を出しながらコストを下げている食品がいっぱい出回っているようです。

 価格をかなり下げながら味わいはかなり本物に近いというのは有効な技術で、コストとの兼ね合いからそのような食材が求められる場所があります。その低価格の恩恵に与かっている事は多いわけです。私の日頃の食生活も、オーガニック食材ばかり集めているわけでは無くスーパーで売っている普通の食材ですし、ファーストフードも利用します。これはもちろん価値のある技術だと思います。

 これらの加工食品は大変価格競争力があるので、厳しいビジネスの現場で本来の原料から造られる価格の高い商材は限られたマーケットでしか使われなくなってしまいました。

 しかし、もちろん本来の原料・製法で造られた食品は味わいが異なりますし、オーガニック食材マーケットを始めとして本来の原料・製法で造られた食品を求めているお客様がいらっしゃいます。またそういうお客様に増えて頂かないと本来の食品は無くなってしまいます。そしてやっぱり本来の造り方をした食品はしみじみおいしいと感じます。

 杉井酒造の「純米本みりん飛鳥山」もその部分を受け持つ食品として、コストは高くなりますが味わいの違いを大事に考え材料には本格焼酎を使う事にしています。 一方、原料焼酎のコストを下げる目的で試しているのが「純米酒粕焼酎」の製造です。

 ここ二年程、清酒業界は純米酒の生産は好調なのですが、酒粕の消費は減っていて酒粕が余っています。そこで純米酒の粕を使った焼酎の製造を試験的にやっています。酒粕は原料の米のデンプンをあらかたアルコールに変えてしまった残り物なのですが、現代の酒造りでは米をあまり溶かさずにきれいな味わいの酒を造るので酒粕にはデンプンがかなり残っています。

 この酒粕に残ったデンプンを醗酵させる事によりアルコールを造る事ができます。酒粕は自社の物の他に近くの酒蔵から安く購入しています。純米酒の酒粕と本醸造の酒粕で出来上がる焼酎の品質に差は無いと思いますが、「純米 本味醂」という肩書を味醂に掲げているので、醸造アルコールが混入している本醸造粕は使わず純米酒粕に限定して使っています。

 酒粕を主原料に使うと焼酎の味わいは米だけの場合よりもややクセ、コクがあります。そこで米焼酎とブレンドして使う事にしています。酒粕の有効利用にもなり味醂のコクを維持しながらコストダウンにもなるので酒粕が余っている間はこの焼酎を造ろうと思います。

 

 

投稿日時:2018年9月6日(木)│
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