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船しぼりの酒2

IMG_1347 お酒の欠点を指摘する酒造用語に「袋クセ」という言葉があります。お酒を搾る”濾布”にバクテリアが繁殖する事によって生じる不快な香りがお酒に付いてしまう事をいいます。

 昔の酒造りでは少しくらいの「袋クセ」がついても、お酒を熟成させたり、活性炭素濾過をしたりする事によりあまり目立ちませんでした。

 それが現代の高精白の原料米を使った吟醸タイプの酒造りでは「袋クセ」に限らず少しでも異臭を付けるとすごく目立ってしまいます。

 特に吟醸酒は活性炭素濾過をしませんし、低温貯蔵で新鮮なまま出荷するので「袋クセ」はすごく目立ってしまいます。吟醸酒まで高級な酒でなくても事情は同じです。

 この袋クセは「舟搾り」でも「ヤブタ式」の搾り機でも濾布が汚れてくれば同じように発生します。予防するにはお酒を搾る「濾布」あるいは「酒袋」を徹底的に洗ってやるしかないのですが、これがとても手が掛かる仕事です。

 「ヤブタ式」の搾り機では一度濾過板に濾布を取り付けると、酒造期間に濾布を取り外して洗うという事は普通は時間と手間がかかるのでしません。酒の代わりに水を流して洗う事はできますが、洗浄としては完璧ではありません。

 その為、精米40%の大吟醸をヤブタで搾ると、前に搾った低精白の酒粕が濾布に残っていて、それが大吟醸に移ってしまい酒質が劣化します。大吟醸ばかり連続で搾れれば、酒質の劣化はほとんど無いと思いますが、通常の蔵ではそれほど連続して大吟醸を仕込ません。

 特に仕込を連続で行わない小さな蔵では搾りと搾りの間に何日か間があく事がありますが、この間に濾布に付着した有機物(酒粕)に雑菌が繁殖して袋クセの原因になります。

 酒袋による搾りも袋に付着した有機物に雑菌が繁殖して袋クセの原因になるのは全く同じですが、酒袋の場合は交換用の袋を用意しておき、これを交代で洗う事により袋クセの付着のリスクを下げる事ができます。

 袋クセの予防がしやすいのが酒袋搾りの一番の利点ですが、他にヤブタほど圧力をかけずに搾る事もできるので歩留りが悪くなりますが、大吟醸の場合酒の味を軽めにしたり、意図的に酒を多めに含んだ酒粕を造る事ができます。

 

 

投稿日時:2019年7月9日(火)│
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