2019年の酒造りを始めました。
今年も9月2日に蒸米を麹室に引き込んで酒造りを始めました。例年と同じく、まずは冷蔵庫の中で生酛を育てています。この酛は 純米原酒「きんの介」として11月末に発売予定です。
さて生酛造りの話題ですが、生酛では麹、蒸米、水を桶に仕込んで”山おろし”といわれる米粒をつぶす作業をした後、2週間ほどかけて麹で米が溶けて甘くなり、乳酸菌が繁殖してから酵母菌が生えてくるという順番が大事です。
酸と糖分が十分に出る前に酵母菌が生えてくる現象を”早湧き”といい、この場合は酵母菌が生酛本来の強い性質を持っていなかったり、望ましくない野生酵母が多かったり、酒母の最終段階で酸の量が不十分で乳酸菌が生き残っていたりしてモロミが順調に醗酵しないリスクが高くなります。
生酛の前半で酵母菌の繁殖を抑えるためには、硝酸還元菌がつくる亜硝酸による阻害、低温環境、濃糖圧迫という三つの要素が大事です。
特に仕込みのあと最初に生えてくる硝酸還元菌といわれる微生物が造る亜硝酸による酵母の繁殖の阻害は生酛の育成に大事な要素です。ちなみに硝酸還元菌による亜硝酸の生成は白菜の漬け物を造るときにもよく現れる現象で最終的に亜硝酸は窒素ガスになって無くなります。
実はこの亜硝酸反応がでる条件は微妙で、生酛・山廃の酛を立てても出る時と出ない時があります。出る事があるという事は酒蔵の環境中にこの微生物がいるのは確かなのですが、条件により亜硝酸を蓄積するほどたくさん繁殖する時と、乳酸菌などに押しまくられて充分繁殖できない時があるようです。
酛の初期の段階で亜硝酸が出ない生酛を使ってもモロミの醗酵に必ず問題があるわけではありませんが、亜硝酸がしっかり出る方が酛の育成は順調に進みます。
今年は亜硝酸反応が確実に出る仕込条件の探求をテーマにしています。