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味醂の仕込みに使う焼酎

IMG_2215 IMG_2217 江戸時代には味醂の製造には「本格焼酎」が使われていましたが、現代では「醸造アルコール」を使って仕込むものが大多数になっています。理由は「本格焼酎」を使うと原価がとても高くなってしまうからです。

 「醸造アルコール」は清酒製造でも使われています。チューハイ、梅酒などの原料にも使われます。ホワイトリカーとして酒屋さんの店頭で普通に売られているアルコールです。

 原料はサトウキビから砂糖を造った残りで、含まれている糖分を醗酵、蒸留して造ります。原料が安価で大きなプラントで大量生産されるので価格が大変安価です。

 粗留アルコールとして輸入され国内で高度に精製されるので純度が高いアルコールになりクセがなくクリアな味わいです。

 一方、昔の焼酎の仕込みに使われていたのは米焼酎が主体だったと思われますが、米は主食で貴重品でしたから、砕米などを使っても原価はそれなりに高かったと思います。しかも味醂の仕込みに使う焼酎はアルコール40%と高いので飲用の焼酎より価格が高くなります。

 しかも味醂は同じ量の米を原料にして造った場合、できる量が純米酒とくらべても七割くらいしかありません。江戸時代の味醂は、当時は貴重品だった清酒とくらべてさらに高価格だったはずです。実質ただの「仕込み水」で仕込む清酒にたいして替わりに「本格焼酎」で仕込む味醂はずいぶん贅沢な造りをしているわけです。

 清酒の酒蔵は全国にたくさんあるのに、味醂を製造する蔵があまり存在しないのは、味醂が高価すぎて需要が少なく商売として成り立ちにくかったせいかも知れません。

 味醂の仕込みに「本格焼酎」を使うと原価が高くなるのは現代も同じです。杉井酒造では「酒造用加工米」や、検査に落ちて酒米として流通できない「等外米」など比較的価格の安い米を使って米焼酎を造ってきましたが、「醸造アルコール」と比べると原料費がはるかに高くつきます。

 その上、モロミを立て、出来上がった酒を単式蒸留機で1本ずつ蒸留していく作業は大規模な連続式蒸留機で蒸留するのに比べ生産効率がかなり落ちます。

 このように「本格焼酎」は「醸造アルコール」とくらべ非常に割高なのですが、敢えて「本格焼酎」を使う事にしている理由と、最近試している粕取りの「本格焼酎」造りについて次回書きたいと思います。

 

 

 

 

投稿日時:2018年4月18日(水)│
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