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芋焼酎の仕込2

粉砕芋ざる 芋粉砕機  杉井酒造の芋焼酎造りは九州の芋焼酎の製造方法といくつか異なります。

まず麹が九州では「白麹」「黒麹」なのにたいして清酒と同じ「黄麹」を使います。九州の芋焼酎造りでも沖縄から「黒麹」が伝わって使われるようになったのは明治時代末期でそれまでは「黄麹」で造られていたそうです。泡盛で使われる「黒麹」の特徴はクエン酸をたくさん生産するためその酸で雑菌を抑える事ができ,醗酵の安全性が高まる事です。明治時代は「黄麹」を使って生酛系の酒母を造っていたようですが、温暖な九州南部では難しかったようです。「黒麹」は大正時代に急速に広まり、戦後に「黒麹」の変異株の「白麹」が広く使われるようになったそうです。

 「クエン酸」を生産しない「黄麹」を使って焼酎を造る時は清酒の製造と同じく「乳酸」を添加した速醸酒母を使います。この場合モロミの酸度は「白麹」「黒麹」を使ったモロミより低めで、温暖な九州には向かないようです。11月の静岡でしたら「黄麹」を使ったモロミで全く問題ありません。

 酵母菌も清酒醸造に使う静岡酵母の「NEW-5」を使っています。モロミの温度も九州より低めなので清酒酵母でよく醗酵します。

 あと大きなちがいが蒸留方法です。普通焼酎製造では出来上がったモロミを蒸留機にいれて、これに蒸気を吹き込む事で蒸留します。この方法だと蒸留の後にドロドロの残渣が大量に発生します。この処理はなかなか大変で昔は海洋投棄したりしたそうですが、現在は処理プラントを作って対応しているそうです。

 杉井酒造では出来上がったモロミを清酒と同じく「ヤブタ」という搾り機にかけて酒と固形の粕に分離して酒を蒸留する方法を採っています。この方法は搾りの工程が一つ増えアルコールの収得率も悪くなりますが、粕は取扱いが容易になり肥料などに使いやすくなるのが利点です。

 以上のような製造工程の違いから杉井酒造の芋焼酎「才助」は九州の芋焼酎と香り、味わいの特徴が異なります。モロミを直接蒸留する九州の焼酎が味にコクがありお湯割りに向くのにくらべ、酒にしてから蒸留する「才助」はややドライな印象でオンザロックが向くと思います。香りの性格も異なり甘藷の香りがするのですが、少し「はっか」をイメージするようなすーとする香りがあります。

 戦後は芋焼酎は安くてくさい酒の代表のようなイメージがありましたが、業界の努力で香味が良くなり焼酎ブームの時は最も人気ではやりの酒になりました。焼酎ブームという状況は落ち着きましたが、日本伝統の酒である芋焼酎の造りは大事にしていきたいと思います。芋焼酎もろみ

投稿日時:2018年12月1日(土)│
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