今年の純米大吟醸仕込(2018BY)
今年も正月明けから生酛純米大吟醸、純米大吟醸、純米吟醸2本 と吟醸酒の仕込をおこないました。モロミは順調に醗酵中で2月15日近辺から順次舟で搾ります。
精米40%の純米大吟醸は静岡県と全国の新酒鑑評会に出品する酒で「速醸酒母」で造っています。静岡県の吟醸酒として河村伝兵衛先生が設計した酒質は酸度が低いのが特徴です。それで静岡県清酒鑑評会での上位入賞酒は酸度が低めというのが普通です。実は杉井酒造で2016BYの鑑評会で大吟醸、純米大吟醸の両部門で第一位県知事賞を頂いた時の出品酒はどちらも酸度が静岡の吟醸酒としてはかなり高い1.7ありました。この酒で県知事賞を頂けたのは全く意外な出来事で静岡県清酒鑑評会で上位入賞を目指すなら酸度が低い酒を造る必要があります。
ところが杉井酒造では「生酛、山廃」系の酒を多く造るようになった頃から上記の2016BYの酒のように速醸で造っている純米大吟醸のモロミも酸が1.7程度と多く出るようになりました。これでは上位入賞は普通に考えて難しくなります。2016BYの県知事賞受賞は全く予想外の受賞でした。
そこで今年は酸度の低い純米大吟醸を造る事を課題にしました。生酛・山廃を造るようになってから速醸酒母の酒の酸度も高くなったようなので、生酛・山廃酒母の乳酸菌の影響を受けている可能性があります。例年から生酛・山廃と速醸は酒母室は別にしたり、櫂棒、暖気樽、なども乳酸菌の汚染を受けないように速醸用は別にしています。それでも酸度の高いモロミになっていまうのが最近の傾向でした。
そこで今年は仕込の時、添え、踊り、の経過を低めにするとともに留仕込もやや低めにして仕込後の温度上昇もゆっくりにしてみました。こうすると酸度が低くなるのは酒造りでは常識ですが、杉井酒造では教科書どうり踊りは13.5℃と醗酵の健全性を優先して吟醸のモロミでも最近は意図的に抑える事はしていませんでした。
静岡県の酒造勉強会に出席した弊社蔵人が、昨年の県知事賞受賞の開運の榛葉杜氏のモロミ経過を勉強して開運さんのモロミは杉錦と比べて、添え、踊りがかなり低温経過なのに気がつきました。この蔵人からの提案で今年は添え、踊りの温度を例年より低めにしてみました。
結果として最近は1.7まで行ってしまう酸度が今年は1.5で止まりました。低温経過の効果が出たようです。それでもまだ高めですがまずは効果があったようです。
大吟醸造りで話題になるのはなんといっても麹造りです。香りの高い、低い、味のふくらみ、そして酸の多い少ないも麹に影響をうけます。今年の麹造りについては次回書きます。