ブログ

清酒の“オリ”について

 
—一般的に清酒に“オリ”が生じている要因は三つに分けられます—

①. しぼりたての清酒に酒袋から漏れたモロミの米の小さな破片が混ざっている状態です。通常はこの酒を静置しておいて“オリ”が低部に沈降してから上澄み部分を採るか濾過によりこれを除去します。最近は「オリがらみ」といってわざとこの“オリ”の部分を残した商品もあります。


 ②. 酒に乳酸菌が繁殖してその菌体が壜の底に沈殿した場合です。この場合は酒の風味が劣化して酸味が多くなります。生酒ではこのリスクが多くなります。清酒に繁殖した乳酸菌では食中毒の危険はありません。


 ③. 清酒中に溶けこんでいる蛋白質が変性して生じた“白ボケ”が凝縮して沈降した“オリ”があります。この“オリ”が清酒に発生する事情は上記の二つより少し複雑ですので詳しく説明いたします。

 しぼったばかりの生原酒には、麹に由来するアミラーゼなどの酵素蛋白質がたくさん溶けています。生酒を濾過すると透明になりますが、その後タンクに貯蔵する時“火入れ”と言って酒を65℃位に加熱するとこの蛋白質が熱で変化して水に溶けにくい性質に変化します。そうすると酒がうっすらと白くにごった状態になります。この状態を“白ボケ”と言います。この“白ボケ”はさらに時間がたつとだんだん集まって沈殿して“オリ”になります。しかし普通はこの変化は酒蔵の貯蔵タンクの中でおこりますので、白ボケの酒を壜詰めするまえに“オリ下げ”といってゼラチンなどのオリ下げ剤と絡めてオリを沈降させた後、濾過して壜詰めすれば酒は透明になりその後オリが生じる可能性は少なくなります。

 ところが近年の清酒造り、特に吟醸酒ではしぼりたての原酒のもつ吟醸香をはじめとするフレッシュな風味を損なわず、さらに酒を若かく保つ目的でタンク貯蔵をおこなわず直接壜に詰め、この時一回火入れをおこないます。その場合壜の中で酵素蛋白が変性して“白ボケ”となりその後凝縮沈降して“オリ”になる事があります。吟醸酒では麹の使用量が少なくまた麹菌を少量しか繁殖させないので酵素蛋白も少なく“オリ”になる可能性は低いのですが味のある純米酒を同じように一回火入れで壜詰めしますと、今回のように“オリ”となる可能性が高くなります。 “白ボケ”が発生してさらに“オリ”として沈降するまでの期間は酒により差があり通常は一年半から二年くらいかかります。この度“オリ”が発生した酒はもともとエキス分が多いため早めに発生したと考えられます。


  上記のように“白ボケ”や“オリ”の発生を防ぐためには二回火入れで壜詰めしたほうがいいのですが、一回火入れの酒のほうが酒の持って生まれた風味や味わいをより豊かに残せるため弊社では一回火入れの壜貯蔵を採用しています。

投稿日時:2005年6月30日(木)│
ENTRY
ARCHIVE