小仕込試験醸造 自然米の酒
杉井酒造では例年3月で酒の仕込は終わるのですが、今年はお米の量が210kgほどの小さな実験的な仕込を最後に冷蔵庫で2本おこないました。
最近は若手の醸造家が新しいレシピを考えていろいろな酒にチャレンジしています。杉井酒造でも蔵人から新しい酒にチャレンジしたいと提案があり、最近の厳しい状況の打開のために小さいながら新しい仕込を試してみる事にしました。
まずはその内の1本目「自然米」の酒について紹介します。「自然米」あるいは「自然栽培米」というのはいわゆるオーガニック栽培なのですが、農薬を使わないだけでなく、有機肥料も一切使わず自然界から供給される窒素成分、ミネラルだけで栽培するという現代の慣行栽培と比べて極めて特殊な栽培方法です。
この栽培方法をで育てた作物は植物が本来もっている生命力を発揮して、厳しい栄養環境下でも病害虫に対して抵抗力を発揮して力強く成長するそうです。農薬、過剰な窒素成分を与えないので環境にやさしいのは言うまでもありません。出来上がった作物は過剰な窒素成分を含まず、腐りにくく体に優しいと言います。しかし反収は少なくなり価格が高くなります。
杉井酒造では「ナチュラル・ハーモニー」さんという自然食品専門店の依頼でこの栽培方法の米を使ったお酒をPBブランドとして造ってきました。ところが今回地元で以前からお付き合いのある青島冷凍工業の会長様からこの米を使った酒の醸造のお話を持ち掛けられました。
青島会長は以前から静岡県内の自然栽培農家の応援をしていて、その需要開発の一環として自然栽培米を使った日本酒を造り酒販免許も取得して販売にも取り組みたいと目論んでいます。このお酒は杉井酒造のチャンネルでも販売する予定ですが、今回は少量の試験販売になります。
そのお酒ですが、精米歩合は90%と江戸時代並みです。酵母無添加の生酛を使いました。麹菌は地元の藤枝北高校生が自然界から採取したものを使っています。
その点では杉錦の生酛純米「八十八」と「米の花を紡ぐ物語」と似ています。味わいは低精米独特のコクと高めの酸味が特徴になると思いますが、八十八のように+16近くエキス分を抑える事はせず甘味もある程度残す予定です。
原料の自然米は一俵あたり三万円程度と山田錦と比べても高価なので価格は0.72㍑あたり1800円から2000円程度になる予定です。
今回の仕込でできる量は0.72㍑瓶で700本程度と少量ですが、お客様の反応が良ければ10月からの仕込で大きな仕込をする予定です。