生もと・山廃造りはなぜ少数派になったのか?2
生もと・山廃造りが少数派になっていった理由の一つは淡麗で若く吟醸香のある酒を最もよしとする市場でその味わいが評価されなっかた事に加え、酒を造る蔵にとって生酛・山廃造りは、速醸より手間ひまが掛かり失敗のリスクが高いという事情があったと思います。
生もと・山廃造りは速醸もとに比べて手間ひまがかかります。特に生酛は手が掛かります。速醸もとが平均14日で造るのにくらべ生酛・山廃造りは乳酸菌を育てるのに12日ほど必要で倍の28日くらいかけて造るのが一般的です。
乳酸菌と酵母を育てる期間、毎日「暖気だる」といって糖化を進めるためにお湯を15リットルほど入れた湯たんぽのようなものを入れて冷めると抜きます。この作業がけっこう大変です。
生もとの場合はさらに仕込は4枚ほどのタライのような桶に分けておこない、これを櫂棒で擂り潰す「山おろし」という作業を4回くらいに分けておこないます。これが大変な作業で人数も必要です。そして擂り終わったもとを「もと寄せ」といって酒母タンクに合併します。この作業も大変です。山廃酒母はこの「山おろし」をやらないだけでかなり楽になります。
いずれにせよ速醸もとは仕込んだ翌日から生もと・山廃の半分の7日ほど「暖気だる」を入れれば出来上がるので生酛・山廃とくらべると作業量はずっと少なくですみます。
経営の事を考えて蔵には余分な人手はおきませんから、ある程度の規模の造りをする蔵では蔵内の酒母を「生もと・山廃もと」から「速醸もと」に変えればかなりの作業量が減り人員削減につながります。これは経営の効率化の視点からみてとても魅力的で合理的です。