生酛純米大吟醸の酛が出来上がりました。
毎年12月は仕込を休み、年明けの一番寒い頃に合わせて大吟醸酒を仕込ます。鑑評会に出品する大吟醸酒は速醸酒母で仕込ます。前に「生酛・山廃仕込はなぜ少数派になったのか?」の記事で書いたように鑑評会で良い成績を狙うには、酒にクセがついたり野生酵母の混入する事を極力避けたいので生酛・山廃造りは不利です。
しかし日本酒の理想の一つである大吟醸酒を生もとで造ってみたいと考え「生酛純米大吟醸」「生酛純米吟醸」を毎年造っています。
生酛で吟醸酒を造るときの要点は二つあります。
一つ目はクセを着けないようにすること。
二つ目は野生酵母の侵入をおさえて添加する吟醸酵母での醗酵をうまく誘導する事です。
どちらも速醸酒母をつかっていれば特に問題なく可能です。
生酛・山廃造りでは最初の段階で乳酸菌を始めとするいろんな細菌が繁殖するのでヨーグルト様の香りや酸っぱい臭いがします。特に「湧き遅れ」といってアルコール発酵がおくれるとこの種の臭いが強くなりがちです。
一方大吟醸酒では優秀な添加吟醸酵母100%で醗酵をすすめるのが理想ですから「早湧き」といって酒母に糖分が十分蓄積して、酵母添加をするタイミングの前に野生酵母が自然に醗酵を始めてしまうのも困ります。「湧き遅れ」も「早湧き」も望ましくなく、ちょうど良いタイミングで添加酵母に醗酵を始めてもらう必要があります。
吟醸造りでは「ツキハゼ麹」といって香りをよくして味を軽くするために麹としての力はあまり強くない麹を用います。ところが生酛・山廃酒母では力の弱い麹を使うと「早湧き」してしまいます。(モロミの麹はツキハゼ麹でだいじょうぶです。)
安全の為には力の強い「総ハゼ」型の麹を使えばいいのですが、精米が良く米が溶けやすい吟醸の酛では溶けすぎると「湧き遅れ」になる可能性があります。またモロミの香りをよくする為には麹由来の脂肪酸などの成分が少なくなるように酛の麹も「ツキハゼ」型にしておきたいという事もあります。そのためにちょうど良い麹を造るのがポイントです。
ことしの「生酛純米大吟醸」の酒母はよい感じで醗酵が立ち上がりましたのでまずは安心しました。もろみは1月15日より仕込ます。