生酛・山廃造りの良さは何か?2
生酛・山廃造りの良さは何かといえば、生酛・山廃造りだから実現できる「おいしさ」「うまさ」があるという事です。それは速醸造りだから実現できるおいしさとは別のおいしさという事になります。
またそれぞれの酛の良さがあるのでどちらが優れていると一方的に決めつける事もできないと思います。そこが嗜好品の特性という事になります。
それでは生もと・山廃造りの特性を生かしたおいしさとはどんな味わいかという事になりますが、それを考えるには酒の「おいしさ」とはどういう事か考えてみる事が大事だと思います。
お酒のおいしさに限らず「おいしい」は考える事ではなく食べたときに「感じる」事なので難しく考える事ではないと思いますが、甘味や、果物の心地よいエステルの香りのように生理的に好ましい要素だけでは味わいが単調で面白みがなくなり、酸味、渋味、苦味その他のフレバーも含んだ複雑な味わいのほうがおしいと感じるのが人間のおもしろいところだと思います。この本来は好ましくない味わいをどこまで入れるか、どういう風に入れるかがおいしさの要素として重要だと思います。」
これは酒の味わいだけでなく、食品一般に言える事でしょうし、食品だけでなく他の、陶芸作品、服飾生地、など人間の感性で評価されるもの全てに共通する事だと思います。
生酛・山廃造りはいろいろな微生物が複雑に関与して造られる醸造方法なので、この点で速醸造りの酒よりおもしろみが出やすいと思います。
一方エステルのよい香りが持ち味の「吟醸造り」や「淡麗」な雑味の無い味わいを目指すには速醸酒母に利点があります。
現在までの日本酒のマーケットは速醸型の酒のおいしさを追求した製品が主流になっていて生酛・山廃型のおいしさがあまり評価されなくなっていると思います。
日本酒のあるべき姿について少し古い資料ですが、1999年1月1日の「酒販ニュース」誌に掲載された文化人類学者の吉田集而氏とワインの製造技師 酒類評論家 麻井宇介氏の対談がたいへんおもしろいので次の機会に紹介したいと思います。