鑑評会の話(全国鑑評会について)
全国新酒鑑評会で 金賞 受賞しました。
酒類総合研究所主催の、「平成14酒造年度全国新酒鑑評会」の結果が、5月下旬に発表になりました。昨年の入賞にひき続き今年は、[金賞] を受賞する事ができました。
この全国新酒鑑評会は、日本酒のコンク―ルの中では最も権威のあるもので、金賞の受賞はたいへん名誉な事とされています。全国は清酒の醸造をしている蔵は、1,500場ほどありますが、今年はその内1,065場が出品し、525場が入賞、入賞の内286場が金賞になりました。金賞率は、26.8%で数字の上ではそう狭き門には感じられないのですが、蔵元としては毎年金賞を取り続けるのは、なかなか難しい事です。
金賞を取れる酒を造るという事のなかに、米洗いから蒸し、麹作り、もろみ管理、搾り、火入れまで酒造りの基本作業を全て合格点でこなす事が必要ですから、金賞を目指す事により、その蔵の酒造技術が向上すると言えます。
今年も広島の一般公開へきき酒に行ってきましたが、開場の10時には、数百メ―トルの長蛇の列ができていて、この鑑評会にかける酒造関係者の熱意と関心の高さを感じました。
そういう訳ですから、蔵元としては金賞を取る事により、自社の製品の技術力を多いにアピ―ルでき、特に普段の宣伝広告費用を掛ける余裕のない小規模酒蔵にとっては、自社の商品の優秀さを知っていただく、大変有効な手段となります。
しかし、確かに金賞を取る蔵は、それなりの技を持っているという事になりますが、実際にお金を払ってお酒を買われる消費者の皆様は、金賞に惑わされず、冷静に商品を選ぶ事が大事だと思います。それは、この鑑評会に出して審査されるのは「出品酒」であって、実際にその蔵の大吟醸の市販酒として販売される商品とはいくらか異なるからです。出品酒はよくできた大吟醸のもろみから、特別な方法で搾り、特に気を使ってビン詰めして出品しますので当然高品質になる訳です。だからと言って、実際に商品として出荷する酒に手を抜いては、金賞を受賞といっても高品質の市販酒にはなりません。
また、現在の金賞受賞酒の主流を占めるカプロン酸エチルの強い酒は、審査で味わって吐き出すにはいい酒だが、実際に普段の食生活の中で飲むには飲みにくい酒、あるいは品質が劣化しやすい酒という批判もあります。その点について静岡県の蔵元は、実際に市販する酒も酒袋で搾り、火入れもびん火入れという手のかかる方法で高品質を維持すよう努めています。私の蔵もそうしています。出品酒は、金賞の取り易いカプロン酸エチルの強い酵母の酒で出しますが、市販の大吟醸は、穏やかな香りの静岡酵母を70%ブレンドして香りは抑えるようにしています。
以上のとおり、全国新酒鑑評会の金賞には、最近いい意味でだいぶ冷めた見方も少なくない様ですが、それは流通、消費者も含めた酒造業界にとっては、むしろ健全な事だと思います。けれども自分たちで酒を造るようになって三年めの今年、やっと金賞が取れ、まずは目標の一つがクリアできて良かったと感じています。なにより一生懸命酒を造っている、若い蔵人には目に見える形で結果が出ることが、自信になりますし、会社全体の志気も上がります。三年酒を造ってみて、だいぶ造りの要点はつかめたとは思いますが、まだまだ品質的に改善したい所は沢山ありますので、金賞は一つの通過点として、蔵全体の酒のレベルをさらに上げるよう努めてきたいと思います。今後とも、「杉錦」にさらなるご愛顧をいただきます様に、よろしくお願い申し上げます。