生酛純米 八十八 の仕込
菩提酛と並行して、シーズンの終わりころ「生酛純米 八十八」を仕込みます。八十八は掛米にご飯で食べるのと同じ90%精米の一般米を使っています。麹は静岡の酒米「誉富士」の70%精米です。
日本酒業界では、よい酒を造るには精米歩合を良くする(米を磨く)のが常識です。米を磨けば、米粒の外側に多い、脂肪分、蛋白質、ミネラルが除去され、酒は雑味が少なく、柔らかになり、吟醸香の成分であるエステルの生成が増え、醗酵は急進せず低温醗酵がしやすくなります。
これは全くそのとおりなのですが、そういう酒ばかりになる事は日本酒の可能性の一部を閉ざす事になるのではないかという疑義は「麻井宇介」「吉田集而」の対談でご紹介したとおりです。麻井宇介氏によれば「米を精米するというのは一種[風土性の抹殺]ですよね。」という事になります。
八十八では米を磨かないだけでなく、日本酒度を+15以上まで醗酵させてエキス分を残さない事(完全発酵)を徹底しています。これは明治初期の日本酒と同じタイプの酒をめざしています。原酒でのアルコールは19度以上になりますが、これを13%代まで割ってビン詰めするので、エキスは通常の酒の半分程度の2%代になります。
明治初期の酒は酸度が4~5くらい出たようですが、現代の酒造の環境ではその酸度はでません。酸度は原酒で3程度になります。
この酒は現代の高精白で雑味がなく、低酸で甘味のある酒になれた一般の日本酒ファンには「こすっ辛くて飲めたものではない。」と感じるかたも多いと思います。
ところが熟成が進むと、くどさのない甘味がでて味にまるみも感じるようになります。吟醸香とか、糖による甘味とか通常おいしさと感じる要素が無いのがこの酒の特徴です。通常の酒を飲んでいて感じる甘重さがなく低めのアルコール分と相まって酔ってから飲める酒だと思います。個人的にはお寿司と一緒に飲むのが好きです。
今年のモロミは昨年以上に切れて+18になりました。 酸度は原酒で3.1 アミノ酸度は1.8と低めです。割水ビン詰め後、室温で一年くらい熟成させてからの出荷予定です。(現在出荷中の酒は0.72L 2013BY 1.8L2014BYです)