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生酛が湧きつきました。

IMG_1632  今年の仕込第1号の生酛が予定より10日遅れてやっと湧きつきました。

 生酛・山廃の酒母には「早湧き」と「湧き遅れ」という予定外(異常)の経過のパターンがあります。 速醸酒母は仕込むとすぐ醗酵を始めるのでこのパターンはありません。

 「早湧き」は酒母の糖化や乳酸発酵が十分進まないうちに、予定より早く蔵つき酵母が自然に醗酵を始めてしまうパターンです。この場合、添加する酵母とは異なる酵母がたくさん繁殖します。また乳酸菌が十分に活動をしていないうちに育った酵母は、生酛の酵母としての力強さが十分でないようです。また早湧き酒母では最終の酸度があまり高くならずに、乳酸菌が生き残ってモロミが不調になるリスクが高くなります。このため「早湧き」は生酛・山廃造りでは昔から忌み嫌われてきました。

 一方「湧き遅れ」は酒母の糖分、酸度が十分高くなって、酵母が醗酵を始める時期になっても湧きつかない状態をいいます。生酛・山廃酒母では仕込初期には亜硝酸が生成され、これにより酵母の活動が抑えれている間に糖化と酸の生成が進みます。仕込んで2週間くらいたったところで、糖分、酸が十分生成されたところで、自然に蔵付き酵母が醗酵を始めるか、酵母添加をしてアルコール発酵を促します。ところが、この時期に糖分濃度が高くなりすぎていると、糖の浸透圧により酵母が活動しにくくなり、酵母添加をしてもなかなか醗酵を始めないという事態がおきます。

 沸き遅れ酒母は早湧き酒母とは異なり、いったん醗酵を始めれば強い酒母ができるようです。しかしあまり湧き遅れると仕込計画をIMG_1633変更する必要がでてきます。今年の最初の酒母2本は成分的には特に湧き遅れるとは予想していなかったのですが、思いがけず湧きおくれてしまいました。湧きおくれ酒母には水を追加で入れて糖濃度を下げたりするのですが、それでも湧きつきませんでした。

 それで今年の新酒第一号 生酛純米原酒「きんの介」の出荷は例年より遅く、11月末から12月初旬になりそうです。

投稿日時:2016年10月14日(金)│
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